インナーブランディングは、企業の価値観や理念などを従業員に浸透させる重要な取り組みとして、注目を集めています。しかし、多くのメリットがある一方で、インナーブランディングの実践は容易ではなく、失敗に終わるケースも少なくありません。
この記事では、インナーブランディングが失敗する主な理由や、失敗により生じるダメージを解説します。取り組みを成功に導くための効果的なアプローチについても解説するため、ぜひ参考にしてください。
インナーブランディングが失敗する理由
インナーブランディングとは、企業理念、ビジョン、バリュー、およびブランド価値といった重要なメッセージを従業員に浸透させる活動です。この取り組みは多くのメリットをもたらす可能性がありますが、失敗する企業も少なくありません。インナーブランディングの失敗には、さまざまな要因が関係しています。以下では、主な失敗の理由を解説します。
インナーブランディングの浸透プロジェクトに取り組まない
インナーブランディングを失敗させる理由の1つが、浸透プロジェクトを開始しないことです。多くの企業は、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定を終えた時点で、取り組みを止めてしまいます。
MVVは、会社の存在意義、目的、目標を整理し、企業の存在目的を表現する重要な要素です。しかし、MVVを定めただけでは、プロジェクトに取り組んだことにはならないため、注意してください。
インナーブランディングの理念が共有されていない
インナーブランディングの理念が組織全体で十分に共有されていない場合も、取り組みが失敗に終わる傾向が見られます。経営陣が朝礼などで一方的にMVVを発表するだけでは、理念の浸透や共有は望めません。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定しただけでは不十分で、理念を具体的な行動や日々の業務に落とし込む必要があるためです。
従業員の理解と賛同を得ることが、プロジェクトを成功させるポイントとなります。従業員の協力なしにプロジェクトを強引に進めても、成功は困難でしょう。
インナーブランディングのプロジェクトが自社に適合していない
プロジェクト自体が自社の特性や文化に適合していない場合、インナーブランディングは失敗する可能性が高くなります。社内の雰囲気や既存の企業文化を十分に考慮せず、一方的または偏った取り組みを行うことは避けるべきです。従業員の価値観や働き方、組織の風土や強みを慎重に分析し、実態と調和するインナーブランディング戦略を立案しましょう。
インナーブランディングでよくある失敗例
ここでは、インナーブランディングの実施において、多くの企業が陥りがちな失敗例を解説します。
教科書どおりのプロジェクト
教科書どおりのプロジェクトを実行すると、インナーブランディングが失敗するリスクが高まります。自社の独自性や文化を考慮していない取り組みは、適していない可能性が高いためです。
たとえば、経営理念の唱和は一般的なアプローチです。しかし、同調圧力を感じ、違和感を覚える従業員もいるでしょう。効果的なインナーブランディングには、自社独自のカスタマイズが不可欠です。
理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が不明確
理念やMVVの不明確さも、インナーブランディングの取り組みを阻みがちです。従業員に伝えるべき理念やMVVが曖昧であれば、浸透は困難を極めるでしょう。また、理念やMVVが企業の現状や市場環境と乖離している場合も、失敗の大きな要因となります。効果的なインナーブランディングを実現するためには、経営理念やブランドの価値を見直すことが不可欠です。
価値観の押しつけ
企業や経営陣の価値観を従業員に押しつける状況も、インナーブランディングの失敗に繋がります。多様な価値観が認められる現代社会において、価値観の押しつけは適切とはいえません。また、企業や経営陣の価値観に共感できない従業員が、疎外感を覚える可能性もあります。
短期的な結果の追求
インナーブランディングで成果を上げるには、長期的な姿勢が求められます。短期間で結果を出すようなプロジェクトは、失敗するケースが多いためです。特に従業員の意識を変えるプロセスには時間を要します。プロジェクトの実行と効果測定・改善を繰り返しながら、取り組みを地道に進めましょう。
インナーブランディングの失敗が企業に与えるダメージ
インナーブランディングが失敗に終わると、組織に深刻なダメージを与える可能性もあります。以下では、インナーブランディングの失敗によって生じる具体的なダメージを解説します。
自社への理解を得られなくなる
インナーブランディングに失敗すると、従業員が自社への理解を損なう可能性があります。従業員が自社の理念や価値観を十分に理解できない状況に陥ると、日々の業務や将来のビジョンに対する共感度が低下するためです。
業務の意味や自分の存在意義が分からなくなった従業員は、不満を蓄積しやすくなります。最悪の場合、離職につながる恐れがあるでしょう。
従業員エンゲージメントが低くなる
インナーブランディングの失敗は、従業員エンゲージメントの著しい低下を招く可能性があります。企業の理念や方針が十分に浸透しないと、従業員の帰属意識が弱まり、仕事への自発的な取り組みが見られなくなるでしょう。さらに、帰属意識の薄れにより、個人のスキルや能力を社外で活かそうと考える従業員が増えると、人材の流出リスクが高まります。
アウターブランディングが期待できなくなる
仕事に対して自発的に取り組む従業員の減少は、自発的な発信も減少する要因です。インナーブランディングのメリットの1つであるアウターブランディングが、十分に機能しなくなる可能性が懸念されます。
従業員同士の連携が弱くなる
インナーブランディングの失敗は、従業員同士の連携を著しく弱める可能性があります。企業の方向性や目標が明確に伝わらなければ、従業員は自社にとって何が重要かをイメージできません。結果として、部署間の壁が高くなり、コミュニケーションに支障が出るようになります。
また、組織全体の一体感が失われると、部署や個人が孤立してしまい、企業の総合力が低下するリスクもあります。
失敗しないためのインナーブランディングの進め方
インナーブランディングを成功に導くには、適切な戦略と実践が不可欠です。ここでは、失敗を回避し、取り組みを効果的に進めるポイントを解説します。
理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を明確に設定する
インナーブランディングの成功には、MVVの明確化が不可欠です。企業が目指す将来像、行動基準、核となる信条を具体的に定義しましょう。明確なMVVは、従業員に企業の方向性を示すとともに、個々の仕事が組織にどのように貢献しているかを理解させる指針となります。
従業員の参加を促進する
従業員がプロジェクトへ積極的に参加するほど、インナーブランディングは成功しやすくなります。オープンな議論の場や提案制度を設け、従業員が意見やアイデアを自由に表現できる環境を整えることが重要です。さらに、企業の価値観に基づいた日々の判断や意思決定の機会を提供すると、従業員は自らの仕事と企業の価値観との結びつきをより深く実感できます。
コミュニケーション戦略を構築する
インナーブランディングの成功には、企業と従業員間における双方向のコミュニケーションが不可欠です。密なやり取りを通じて、従業員は企業の目標と自分の役割をより深く理解できるようになり、組織に積極的に貢献するための基盤が築かれます。
企業から一方的に情報を伝達するだけではなく、従業員側からも質問や意見を発信してもらえるように、戦略を練りましょう。たとえば、後述する社内イベントを活用すると、コミュニケーションの機会を創出できます。
インナーブランディングを成功させるための具体的な手段
インナーブランディングを効果的に進めるために、さまざまな手段を活用しましょう。ここでは、成功につながる具体的なアプローチ方法について解説します。
社内SNSの活用
経営層が社内SNSを通じて経営理念やビジョンを直接発信すると、部署や職種、エリアを超えて全従業員に一斉に同じ情報を届けられます。また、社内SNSは従業員間のコミュニケーションも促進し、風通しのよい職場環境づくりにつながります。
社内報の活用
多くの企業が情報共有ツールとして社内報を活用しています。社内報で定期的に情報を発信すると、組織内にまんべんなく情報を伝達できます。特に、経営層からのメッセージ発信には、社内報の活用がおすすめです。近年は、働き方の多様化に対応するため、従来の紙媒体に加えてWeb社内報を導入する企業も増加しています。
ブランドムービーの作成と活用
ブランドムービーも、インナーブランディングに効果的です。共有したい内容を映像で伝えることで、従業員は内容をより深く、素早く把握できます。
ブランドコンセプト・企業の存在価値・ビジョンなどを、分かりやすく従業員に伝えられるためには、ブランドムービーの作成が欠かせません。制作にはコストがかかるものの、社内研修や顧客向けプレゼンテーションなど、ブランドムービーはさまざまな場面で活用されます。
社内イベントの活用
多くの従業員が参加する社内イベントや研修を開催することで、理念やビジョンをその場で効果的に共有できます。イベントや研修は、普段接点のない従業員間の交流を促進する機会にもなり、組織として一体感を高められるでしょう。
なお、近年はオンラインでのイベントや従業員研修が増加しており、場所や時間の制約が減少したことで開催のハードルが下がっています。
まとめ
インナーブランディングが失敗に終わると、組織力の低下につながる可能性があります。インナーブランディングの成功に向けて、明確なビジョンを策定するとともに、企業と従業員間、従業員同士のコミュニケーションを活性化させましょう。
インナーブランディングの失敗要因と対策についてよくある質問
Q1. インナーブランディングが失敗する主な原因はなんですか?
A. インナーブランディングが失敗する主な原因は以下の通りです。
- 浸透プロジェクトを進めない:MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定しただけで満足し、具体的な浸透施策を実施しない。
- 理念の共有が不十分:経営層が一方的に理念を伝えるだけでは、従業員の共感が得られず、浸透しない。
- 自社の文化と合わない施策を導入:企業の特性や従業員の価値観に合わない方法を採用すると、効果が出にくい。
Q2. インナーブランディングの失敗が企業に与える影響は?
A. 失敗すると、以下のような問題が発生します。
- 従業員の自社理解が浅くなる → 企業理念やブランド価値が伝わらず、組織の方向性が不明確に。
- エンゲージメントの低下 → 帰属意識が薄れ、従業員のモチベーションや業務への主体性が低下。
- アウターブランディングへの影響 → 社員の発信力が低下し、企業のブランドイメージの低下につながる。
- 社内の連携が弱まる → 組織の一体感が損なわれ、コミュニケーション不足が発生。
Q3. インナーブランディングを成功させるためのポイントは?
A. 失敗を防ぐためには、以下のポイントが重要です。
- 理念やMVVを明確に設定し、従業員が理解しやすい形で発信する。
- 従業員の参加を促進し、双方向のコミュニケーションを重視する。
- 社内SNSや社内報を活用し、理念を継続的に伝える場を作る。
- 社内イベントやワークショップを実施し、企業文化への理解を深める機会を提供する。
- 短期的な成果を求めすぎず、PDCAサイクルを回しながら改善を続ける。
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