インナーブランディングを成功させるには、適切な手順を踏んで進めることが重要です。施策の進捗管理や、その効果を定期的に確認することも欠かせません。
本記事では、効果的なインナーブランディングの進め方を解説し、具体的なアプローチを示します。これから取り組む企業にとって、計画的かつ着実に進めるための参考にしてください。
インナーブランディングとは
インナーブランディングとは、自社の企業理念やビジョン、バリュー、そしてその他のブランド価値を従業員に浸透させるための活動を指します。これにより、従業員が企業のメッセージを理解し、企業イメージや自社への誇りを高めることが目的です。
従業員が企業の理念やビジョンに共感し、行動に反映させることで、組織全体の一体感やパフォーマンス向上が期待されます。また、インナーブランディングは「インターナルブランディング」とも呼ばれることがありますが、基本的には同義であり、社内に対するブランド強化の手法として用いられます。
インナーブランディングとアウターブランディングの違い
ブランディングは、主に「インナーブランディング」と「アウターブランディング」の2つに分類されます。インナーブランディングが企業内、つまり従業員向けにブランド価値を伝える活動であるのに対し、アウターブランディングは企業外のステークホルダー、顧客や取引先などに向けてブランドメッセージを発信する取り組みです。
この2つのブランディング活動を両立して進めることで、社内外で一貫したブランドメッセージを伝えることができ、企業全体のブランド力強化につながります。インナーブランディングがしっかりしている企業ほど、アウターブランディングでも成功しやすい傾向があります。
インナーブランディングの必要性
インナーブランディングは、社内文化の形成に寄与し、従業員が共通の目標に向かって一体となる環境を作り出します。これにより、社内でのコミュニケーションが向上し、従業員の意識や行動が統一されることが期待されます。
また、社内向けのブランディング活動は、結果的に社外の顧客や取引先に対しても企業のイメージ向上に繋がり、ブランド価値を高める効果があるとされています。
インナーブランディングの進め方
ここでは、インナーブランディングの進め方を4つのステップに分けて解説します。
1.自社の現状を把握する
最初に、自社の現状を客観的に理解することが重要です。従業員アンケートを通じて、理念やビジョンがどの程度浸透しているかを把握し、組織の課題を明らかにします。これにより、どこに改善が必要かを特定できます。
2.目的・メッセージを決める
インナーブランディングの目標を設定し、それが組織全体の指針となるようなメッセージを定めます。目標は、共通の価値観や方向性を社内に浸透させるため、具体的でわかりやすいものにする必要があります。このメッセージが、従業員1人ひとりがブランドの理念に共感し、行動に反映させるための重要な基盤になります。
3.コミュニケーション戦略を立てる
次に、効果的なインナーブランディングを実現するために、具体的なコミュニケーション施策を設計します。施策の実施計画とスケジュールを立て、進捗を可視化することで、全員が状況を把握できるようにします。
4.効果を分析する
インナーブランディングの施策を実行した後は、効果の分析が欠かせません。従業員満足度や参加人数、アンケート結果などをもとに、施策がどれだけ効果を上げたかを評価します。
これにより、成功した点や改善が必要な点が明確になり、次回の施策に向けた改善策を導き出すことができます。
インナーブランディングの施策例
インナーブランディングの施策例を5つご紹介します。
社内向けの情報発信
経営者のメッセージや顧客の声を社内報やポータルサイトで発信することは、従業員に会社のビジョンや価値観を浸透させるための効果的な手法です。定期的な発信を通じて、従業員が企業の方針を理解しやすくなり、共感を持って働くことができます。
特にSNSやポータルサイトを利用すると、従業員がいつでも手軽に確認できるため、効率的に情報を届けることが可能です。
社内イベント
社内イベントは、従業員同士のコミュニケーションを深める大切な場です。サークル活動や社会貢献活動、周年行事などのイベントは、従業員に一体感をもたらし、企業文化の定着を促進します。
これにより、個々のモチベーション向上だけでなく、社内での協力意識が高まり、仕事への熱意やパフォーマンスが向上します。
クレド
クレドとは、企業の理念や価値観を短い言葉で表現したものです。小さなカードに記載して従業員に配布し、常に携帯できるようにすると、会社の基本的な価値観が日常業務の中で自然と従業員に浸透します。
クレドを活用することで、従業員は会社の理念に基づいた行動を取りやすくなり、全社的な一貫性が生まれます。
ワークショップ
ワークショップは、従業員が主体的に考え、学び合う場を提供する施策です。講座やグループ学習、研究集会などを通じて、自発的な参加を促し、会社のビジョンや理念についてより深く理解してもらう機会を提供します。
ワークショップは、従業員が自分の意見やアイデアを共有できる場としても機能し、組織内の風通しを良くする効果があります。
表彰制度
表彰制度は、企業文化や価値観を浸透させるための有効な手段です。特に、従業員の功績や成果を称えることで、他の従業員にとっても一つの目標となり、モチベーションを高める効果があります。
また、表彰式を通じて、従業員同士の相互理解が深まり、組織全体の士気が向上します。企業の理念に基づいた行動を評価することで、全従業員が価値観を共有しやすくなります。
インナーブランディングに適したタイミング
インナーブランディングを実施するタイミングとしては、会社の歴史やアイデンティティを再確認する必要が生じたときが最適です。
例えば、企業が創立周年を迎える時期や経営方針を見直す時期には、従業員全体で会社のビジョンや価値観を再確認することが重要です。これにより、従業員が共通の目標を持ち、一体感を持ちながら会社の発展に貢献できるようになります。
インナーブランディングの失敗につながる原因
インナーブランディングの失敗につながる原因は主に3つあります。それぞれについて以下で解説します。
理念や価値観が明確になっていない
インナーブランディングを成功させるためには、まず企業の理念や価値観が社内で明確に共有されていることが前提です。これが不明確な場合、従業員は何に共感し、何を目指すべきかがわからず、施策が無駄に終わってしまうことがあります。
そのため、企業の根本的なミッションやビジョンをしっかりと策定し、それを効果的に伝える仕組みが必要です。もし、浸透がうまく進んでいない場合、再度その理念や価値観を見直し、再構築することも重要です。
短期的な成果を求めている
インナーブランディングは長期的な取り組みです。短期間での目に見える成果を求めるあまり、価値観や理念が強引に押し付けられると、従業員はかえって反感を持つ可能性があります。特に、従業員との信頼関係を築くには時間がかかり、その中で企業の理念やビジョンが自然と浸透するのが理想です。
また、経営層と従業員の間で共通認識が欠けていると、従業員は自分の意見が反映されていないと感じ、ブランディング施策に対するモチベーションが下がる可能性があります。双方が時間をかけて理解を深めることが大切です。
不向きな施策に取り組んでいる
企業文化や従業員の特性に合わない施策を無理に導入すると、インナーブランディングが失敗するリスクが高まります。例えば、自由な発想や柔軟な働き方を重視する企業で、厳格なルールや制約のある施策を導入すると、従業員の自主性を損ない、結果的に逆効果となることがあります。
施策を導入する際には、企業の風土や従業員の性格にマッチした方法を慎重に選ぶ必要があります。また、特定の層や部署だけに偏った取り組みは、全体の連帯感を損ねることがあるため、施策の公平性と柔軟性を保つことが重要です。
インナーブランディングに成功するポイント
ここでは、インナーブランディングに成功するポイントを2点解説します。
経営層が率先して行動する
経営層が企業の理念や価値観を率先して実践することで、従業員に理想の姿を示します。リーダー自らが手本を見せることで、従業員は理念を身近に感じ、共感が生まれやすくなります。単なる指示ではなく、行動で示すことが重要です。
従業員をプロジェクトに参加させる
従業員が主体的に行動できる機会を提供することで、彼らの意識が高まり、ブランドへの理解が深まります。プロジェクトに参加することで、従業員が自らの役割を認識し、組織全体の目標と一致した行動を取ることが促進されます。特に、企業の価値観や理念をストーリー化し、わかりやすく伝えることで、従業員の自発的な参加とブランド浸透が一層進むでしょう。
インナーブランディングを進める際の注意点
インナーブランディングを進める際には、いくつか注意すべきポイントがあります。ここでは、インナーブランディングを進める際の注意点を解説します。
コストがかかる
インナーブランディングは、従業員の教育やコミュニケーション施策などに多大なコストがかかります。時間や人的リソースも必要となり、外部向けのブランディング活動(アウターブランディング)がおろそかになるリスクもあります。そのため、事前に適切なリソース配分が求められます。
従業員の考えを尊重する
インナーブランディングを成功させるには、従業員の認知から理解、共感へと進むステップが不可欠です。従業員に対し、理念や価値観を押し付けるのではなく、自由意志を尊重しながら共感を促す工夫が必要です。従業員が、自らの意思で理念に共鳴できる仕組みを設計することで、ブランドへの深い共感と浸透が進みます。
まとめ
インナーブランディングは、経営層のリーダーシップや従業員の主体的な参加が成功のカギです。明確な目的を定め、効果的な施策を進めることで、企業全体の成長に大きな影響を与えます。
株式会社リンクソシュールでは、インナーブランディング領域におけるサービスをワンストップで支援いたします。20年以上の組織人事コンサルティングの実績をもとに、再現性と実行力を兼ね備えたサポートを提供しています。効果的なインナーブランディングの実現に、ぜひ役立ててください。
インナーブランディングの進め方についてよくある質問
Q1. インナーブランディングの基本的な進め方は?
A. インナーブランディングは、以下の4ステップで進めます。
- 現状把握:従業員アンケートなどで、理念の浸透度や課題を明確にする。
- 目的・メッセージの策定:企業理念を整理し、統一感のあるブランドメッセージを作成。
- 施策の実施:社内報・イベント・ワークショップなどを活用し、ブランド価値を浸透。
- 効果測定と改善:アンケートやデータをもとに、施策を継続的に改善する。
Q2. インナーブランディングを進める際の注意点は?
A. 以下の3点に注意が必要です。
- 短期間での成果を求めすぎない:長期的な取り組みが必要。
- 経営層の関与を強化:トップが率先してブランド価値を体現する。
- 従業員の意見を反映する:一方的な発信ではなく、共創の姿勢を持つ。
Q3. 成功のために活用できる施策は?
A. 具体的には以下のような施策があります。
- 社内報・ポータルサイトで理念を定期発信
- 社内イベントで従業員の一体感を醸成
- **クレド(企業理念カード)**の配布
- ワークショップでブランド理解を促進
- 表彰制度で理念に沿った行動を評価
これらを組み合わせ、企業文化に合った形で実施することが重要です。
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